褒められたい一人暮らし
わたしは、一人暮らしをしている。
一人暮らしをしているのだ。声を大にして言いたい。一人暮らしを、している。褒められたい。だれか褒めてくれ。一人で、たった一人で、東京の小さな部屋で、暮らしているのだから。
排水溝は、掃除をしないと詰まる。ゴミはゴミの日、曜日が決まっている。ペッドボトルのラベルははがす。虫が出たら、キンチョール。トイレットペーパーは、なくなる。
お腹がすいても、自分で作るしかない。お腹がいたくても、だれもお腹をさすってはくれない。
咳をしてもひとり。声を出して笑ってもひとり。どんなに楽しく飲もうとも、仕事が楽しくとも、嫌なことがあっても、家に帰ればひとり。
ただいま!!と元気に帰っても、ただいま、とうなだれて帰っても、無言で扉をあけても、おかえりは聞こえない。
お風呂に入らなくて寝てしまっても、朝がくる。なんで起こしてくれなかったの〜!と人のせいにすることもできない。
深夜に食べたくなってしまったアイスを、止める人はいない。
褒められたい。月曜日は、よく出勤したねって褒められたい。火曜日は、ごはんつくって偉いねって褒められたい。水曜日は、燃えるゴミをちゃんと出せて偉いねって褒められたい。木曜と金曜は、もうちょっとでお休みだよ、よくがんばったねって労われたい。土曜は、お外に出て偉いね、日曜はゆっくり休んで偉いねって褒められたい。毎日毎秒褒められるべきだ。毎日毎秒褒められてここまで大きくなったのに、突然ひとりで、たったひとりで暮らすだなんて、そしてそれが当たり前だなんて、どうかしてる。もはやこれは、褒められたい、ではない。褒められるべき、だ。
そう思いませんか。
そう思います。誰か褒めてください。
おわり